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献体とお葬式(献体登録・お葬式の内容・よくある誤解)

ブログ献体に関する知識

献体(けんたい)とは、教育・研究のために「無条件・無報酬」で自分の遺体を提供することです。献体は生前にご本人の意思(+ご家族の同意)での登録が必要です。ご遺体は登録先の大学へ搬送され、医学生の解剖学に役立てられ、献体終了後(1~3年後)、ご遺骨となり遺族の元に帰ってきます。

また、献体登録者が死亡した場合、献体前(大学にご遺体を提供する前)にお葬式を行うことも可能です。

今回は、献体の基本情報と献体前のお葬式について簡単にご説明します。

献体登録希望者の増加

解剖は大きく分けて3種類あります。

  • 正常解剖: 人体の構造を調べるため
  • 病理解剖: 診断の妥当性、死因、病変を調べるため
  • 司法・行政解剖: 変死体の死因を調べるため

献体は「1.正常解剖」に関係します。

解剖学は全身の構造を学ぶための基礎です。現在、国内には医学部81校・歯学部29校があり、解剖学実習に使用される遺体の98%が献体によるものです。

献体の希望者が増加傾向にあり、2023年(令和5年)では32万人を超えています。希望者の増加にともない、登録の一時停止や順番待ちなどを設定している大学もあるようです。

献体の登録方法について

献体を希望される場合は、生前にご本人の意思で献体登録(無料)が必要です。臓器提供の場合はご本人が亡くなった後、ご家族様の意思だけでも可能となりましたが、献体は「ご本人の意思」+「事前の登録」が絶対に必要です。

注意

「亡くなる直前、亡くなった直後」に献体を希望されたとしても、献体はできません。

献体のご相談・登録は、大学(医学部・歯学部)または献体篤志家団体(献体の会)へ

献体を希望する場合は、お住まいの都道府県にある医科大学(大学医学部)・歯科大学(大学歯学部)、または献体篤志家団体(献体の会)へご相談ください。

※申込先は、大学「病院」ではありません。

大阪府内の医学部・歯学部
  • 大阪大学(吹田市)
  • 大阪公立大学(大阪市阿倍野区)
  • 近畿大学(大阪狭山市)
  • 大阪医科大学(高槻市)
  • 大阪歯科大学(枚方市)
献体登録までの流れ
  1. 献体について、ご家族と話し合い
  2. お住まいの地域にある医科大学(大学医学部)などに相談
  3. 申込み書類がご自宅に到着
  4. 必要事項を記入、返送 ※同意者(親族など)の署名捺印が必要
  5. 献体登録完了(献体登録カードが後日届く)

ご家族などの同意も必要

登録手続きは献体希望者本人が行いますが、ご本人の意思と同時に「親族(配偶者・親・兄弟姉妹・子・孫など)の同意」も必要です。

実際、大学と連絡を取り献体提供を行うのは残されたご家族です。本人の意思を尊重することは大切ですが、残される遺族の気持ちも大切です。将来、献体をお考えの方は必ずご家族・親族と十分に話し合って理解・同意を得ておくことが大切です。

おひとりさま(家族・身寄りのない方)の場合は、各大学または献体の会へご相談ください。

希望者増加で献体登録ができない、登録済みでも状況によっては献体が不可の場合も

献体希望者の増加にともない、登録の順番待ち、年齢制限(60歳以上のみ登録可能)、受付の一時停止をしている大学・団体もあるようです。ご希望のタイミングで献体登録ができるとは限りませんのでご注意ください

また、すでに献体登録(本登録)済みであっても、下記のケースでは献体を行えない可能性もあります。

  • 献体登録後、ご家族が反対した場合
  • 事故死、変死した場合
  • 感染症にかかっていた場合

献体提供を実行するのは残されたご親族です。その時、もし反対する方が出てきた場合は献体ができない可能性もあります。

また、献体登録時に健康な状態であっても、お亡くなりになった状況によっては必ずしも献体可能とは限りません。

献体と臓器提供の違い

献体と臓器提供、両方を登録することは可能です。しかし、実際に死亡した時は、どちらか1つしか選択ができません。

その理由は、臓器のない遺体は献体対象外であり、献体では臓器を取り出すことができないからです。

献体の場合、ご遺骨が手元に戻るまで約1~3年かかります。臓器提供の場合は、数時間の摘出手術後に退院が可能ですので、ゆっくりとお葬式を行うことが可能です。

▼臓器提供に関する詳細情報

お葬式は献体前(大学にご遺体を提供する前)に行うことも可能です

「献体=お葬式ができない」と思われるかもしれませんが、献体提供前(大学にご遺体を提供する前)に、お葬式を行うことは可能です。

ただし、ゆっくりとお別れの時間を取るお葬式はむずかしいとお考え下さい。

お葬式費用はご家族の負担になります

誤解されている方も多いですが、大学や献体団体が葬儀を行うことはありません。

お葬式を行う場合、あくまでご家族が葬儀社へ依頼し、葬儀費用・僧侶への御布施などは自己負担になります。お墓・納骨堂への埋葬なども自己負担となります。

MEMO

大学が負担してくれる費用は、「葬儀式場から大学までの搬送費用」と「火葬料金」です。

お葬式は死後48時間以内に行います

大学側は基本的に【ご遺体の引き渡しは死亡後48時間以内】を希望していますので、あまりゆっくりとお葬式(お通夜・告別式など)は行えません。死亡時刻や葬儀式場の空き状況によっては、宗教儀式を一部省略する場合があります。

当社でも実際に行ったお葬式は【1日葬(告別式のみ)】です。日程が慌ただしかったため、あえてお通夜を行わず、その日はご家族様全員が私服でゆっくり故人様に付き添う日にされました。

献体前のお葬式の流れ
  1. ご逝去
  2. 親族が大学・葬儀社へ連絡
  3. お通夜・告別式(※告別式のみになる可能性が高いです)
  4. 出棺・献体(葬儀式場から大学へ搬送)
  5. 火葬(1~3年後)、ご遺骨引取り
お葬式プラン(参考)

シンプルプラン(葬儀費用:18万円~)

献体提供までの間、ご自宅または専用安置室にてご安置します。お通夜・告別式は行いません。「お金はかけたくないけれど、遺影写真やお坊さんの読経くらいはしてあげたい」という方へ。

家族葬プラン(葬儀費用:30万円~)

ご家族や友人など少人数でのお葬式プランです。一般的なお葬式と同じようにお通夜・告別式も可能ですが、大学への引き渡し時間の都合で、1日葬(告別式のみ)になる可能性が高いです。

お葬式を行わない(すぐに大学へ献体提供する)場合

お葬式を行わず、すぐに大学へ献体提供をお考えの場合は、死亡後に大学へ連絡をすれば、病院・施設までお迎えに来てくれます。

大学まで搬送する寝台車費用も大学が負担してくれます。詳細な流れは、献体登録先の大学へご確認ください。

  1. ご逝去
  2. 大学へ連絡
  3. 病院・施設までお迎え、献体(大学へ搬送)
  4. 火葬(1~3年後)、ご遺骨引取り

火葬や遺骨の引き渡しは1~3年後

献体終了後(約1~3年)に大学側が火葬をし、ご家族へ遺骨を届けてくれますので、お墓への納骨も可能です。返還日時の連絡もあります。また、大学によっては収骨(お骨上げ)の立会いが可能な場合もあるようです。

ご遺骨の返還を希望されない場合は、大学内の納骨堂や提携先の共同墓地などに納骨されることになります。また、各大学では献体者に対し感謝と慰霊の祈りをささげる慰霊祭を毎年行っています。

ご遺族への慰霊祭のお知らせ、慰霊祭に出席された遺族へその場でご遺骨を返還するケースもあります。(※大学により対応は異なります)。この慰霊祭をもって葬儀とされる方もいらっしゃいます。

献体に関してよくある誤解

「大学が葬儀をしてくれる」・「亡くなった後のことは全部してくれる」と誤解をされている方もいらっしゃいますが、大学や献体団体は葬儀や葬儀後のサポートは行いません。お葬式を行いたい場合は、ご家族様が葬儀社を手配する必要があります。

あくまで「献体提供いただいたご遺体は、献体終了後に遺骨にしてご家族様へお返しします」が献体の内容です。

  • 無料で火葬してもらえる
  • 遺骨は大学内の共同墓や納骨堂で無料で納骨(永代供養)してもらえる

などの理由で、献体を「葬儀(火葬)代行」のように考える方もいると聞きますが、「無条件・無報酬」・「医学への貢献」という献体本来の趣旨からはずれている気もします。

確かに、大学は【葬儀式場(ご安置場所)から大学までの搬送費用】と【火葬費用】を負担してくれますので、火葬のみでしたら費用はほぼ必要ありません。ご遺骨を引取らない場合は供養もしてくれます。

合理的に考えて、費用もかからず社会貢献ができるメリットはあります。葬儀や遺骨に対する供養などに無関心な方、経済的な事情により献体がベストな選択と考える方がいることも理解はできます。

ただし、実際に献体を実行するのは残されたご家族様です。献体にはご家族様との話し合いがとても重要です。

まとめ

献体とお葬式に関して簡単にご説明しましたが、献体には「医学に貢献したいという本人の希望」と「残されたご家族の想い」の両方ともに大切です。

心の準備や理解が十分でなかった場合、

  • きちんとお葬式をしてあげればよかった…
  • 遺骨はいつ戻ってくるんだろう?
  • 今、どんな状態なんだろう?

など、長い間気持ちが落ち着かず、後悔や悲しみを抱く遺族もいらっしゃるようです。

「火葬費用がかからない」・「遺骨も供養してくれるからお墓も必要ない」など理由で選択されることは、あまりおすすめしません。

自身の体を医学に役立てたい気持ちはとても尊いものだと思います。ただし、ご自身(希望者本人)の考えや思いをご家族・親族に十分に理解してもらい、納得した上で協力してもらうことが理想です。

献体をご希望の方は、ぜひゆっくりとご検討ください。

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