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お墓で困っていること

最近、「墓じまい」の文字を目にする機会も増えてきました。実際、お墓の維持・管理・承継(お墓の管理者)を心配、困っている方も多いと思います。中には「お墓は不要、自分の遺骨は自然に還してほしい」と希望される方も。供養の方法も多様化しています。

墓じまいは、基本的に【お墓を墓地管理者に返却して、埋葬していた遺骨を他の場所(永代供養の合葬墓や納骨堂など)に移す】ことを言います。また、他の供養方法として、海洋散骨や遺骨ダイヤモンドを選ばれる方もいます。

お墓の承継者問題で、仕方なく墓じまいを選択せざるを得ない場合もありますが、昔から続く「家」ごとのお墓の承継をやめて、「個人」の価値観を大切にした供養の方法へ切り替える時代になってきている感じがします。

今回は、書類を整理中に「お墓・納骨・墓じまいに関する記事」を見つけたので、アンケート結果と一緒にまとめてみました。

より詳しい、墓じまいや改葬(お墓の引っ越し)などについては、またの機会にお話ししたいと思います。

追記

アンケートは2018年のものですが、現在(2024年)でも基本的にあまり変化は無いと思います。

お墓について困っていることは?

まず、お墓について皆さんが何に困っているのか?

朝日新聞デジタルのアンケート(2018年、合計:322回答)では、以下の結果でした。

質問:お墓で困っている事は何ですか?

  • 1位:墓に関心がない
  • 2位:遠くにあってお参りに行けない、維持できない
  • 3位:墓を守ってくれる人がいない
  • 4位:墓がない
  • 5位:配偶者(の家)と同じ墓に入りたくない
  • 6位:どこに、誰に相談すればいいのかわからない
  • 7位:今の墓で高額な維持費を請求された
  • 8位:墓じまいや墓移し(改葬)の際に離檀料など高額な金額を請求された

朝日新聞デジタルのアンケート(2018年)より

1~3位の回答数が、

  • 1位:114
  • 2位:59
  • 3位:55

合計:228回答(全322回答)。この3つだけで約70%です。

1位の【墓に関心がない】がよく分かりません、きっと「先祖代々のお墓があるけど、自分は関心がないから将来どうしよう…」なのかな思います。

ほとんどのお悩みは【お墓が遠い、維持できない、承継者がいない】ということですね。

実際に「お墓を継ぐ人がいない」と困っている人が増えている?

当社にお葬式をご依頼くださった方の中には、

もともとお墓が無いので、永代供養の合葬墓へ納骨します。

という方は多いです。でも、「承継者がいないので、墓じまいをしたい」というご相談は少数です。一方で、新しくお墓を建てるご相談もあります。

以前、ある墓地で墓じまいの手続きをした際、墓地委員会の役員さんが「最近、墓じまいが増えてお墓が減っている」とおっしゃっていました。

ただ、その墓地の利用者は主に地元住民ですので、地元に戻らないと決めたご家族(長男など)が利便性の良い他の場所にお墓を購入している可能性は高いと思います。もしかすると、地方の墓地は徐々にお墓が減っているのかもしれませんね。

お墓は自由に売買できません

「お墓の所有権」は墓地・霊園の管理者にあるため、勝手に他人と売買はできません。あくまで「お墓を購入する=お墓の土地を借りている」ですので、墓じまい(お墓の返却)の際は「更地」に戻す必要があります。

親や配偶者のお墓はどうしたい?自分のお墓は?

再び、朝日新聞デジタルのアンケート(合計:322回答)の結果をご紹介します。

「親や配偶者のお墓、自分のお墓をどうしたいか?」について。

本来、「現在お墓がある人・ない人」に分けての同じ質問がベストだと思います。また、年齢・性別・既婚未婚など立場によって回答に偏りが出ますが、ご参考にご覧ください。

【質問】:親や配偶者のお墓はどうしたいですか(どうしましたか)?

最も多い回答:「先祖代々のお墓(回答数:95)」

既にお墓がある場合は、そのお墓に納骨するという基本的な流れですね。

2番目に多い回答が「海洋散骨や樹木葬(70)」と「永代供養墓(63)」でした。これは主に「現在お墓がない」方の回答だと思います。

【質問】:自分のお墓はどうしたいですか?

最も多い回答:「海洋散骨や樹木葬など(169)」

つまり、【自分のお墓は必要ない】と考えている方が多いということですね。きっとこの回答には、「自分の子に管理や金銭的な負担をかけたくない」そんな気持ちが含まれていると思います。

いろいろな意見

  • 両親の墓が遠く、自分も病気で行けません。親戚から「墓参りに来ないのか?」と責められ、お墓参りは誰のためなのか疑問を感じます。
  • 遠い田舎の墓に入る予定はない。今の自宅の近くで墓を買って改葬することを決めました。
  • 主人の実家の墓なんて、知らない人ばかりで、死んでまで肩身の狭い思いをするのは嫌だ。
  • 自分が父親を亡くした時、墓参りで気持ちの整理がついた。そう考えると、娘達の気持ちの整理にも墓が必要なのかなと考えます。
  • 私は永代供養墓(合葬墓)に納骨が良いと思っている。
  • 子が親の葬儀をしたり、墓参りするのは自然な事だと思う。
  • 墓参りって、故人への想い・感謝・道徳など日本の美しい文化だと思う。

個人の選択を尊重する時代?

「自分のお墓は必要ない」という意見とともに、最近「夫の家の墓に入りたくない」という言葉も時々お聞きします。

  • 夫の親との関係が良くない
  • 夫の実家で嫌な(肩身の狭い)思いをした
  • 夫の「家」と結婚したわけじゃない

夫と同じ墓に入らない選択をした人の理由は様々です。そして、法律上、妻が夫と同じ墓に入る決まりはありません。あくまで慣習として続いてきたものです。

以前、ある女性がお墓に関しておっしゃっていた言葉ですが、

私自身はお墓がなくても構いません。遺骨が自分自身だとしたら、お墓の下の狭くて暗い場所に入るより、明るくて季節を感じられる自然へ散骨された方が良い。

自分が亡くなったら、息子に任せるしかないけど、遺骨の一部だけでも散骨して欲しいと思います。

自分の遺骨をお墓に閉じ込めるのではなく、自然へ散骨して欲しいという気持ちは個人的にとてもわかります。私自身も一部は散骨して欲しいと思っています。

夫婦や家族がお互いの意思を尊重しあった結果として、別々のお墓に入る(または散骨)というのは良い選択だと思います。

今までは、【先祖代々続いてきたお墓を誰かが守る】という意識が強く残っていたと思いますが、その意識も時代とともに変わるの自然な事かもしれません。

墓じまいの依頼先や費用について

ここからは、墓じまいに関して簡単にご説明します。

墓じまいは「お墓(墓石)を撤去して、更地の状態に戻して墓地・霊園に返却する」ことです。そして、埋葬されていた遺骨を新しい場所に納骨(または散骨など)します。

  1. お墓を更地に戻す手続き
  2. 遺骨を新しい場所に納骨する手続き

上記の2つが必要です。

墓じまいの依頼先は基本的に石材店になりますが、葬儀社さんでも対応(石材店を紹介)可能な場合があります。

費用は、お墓の大きさ(墓石や敷地の広さなど)によって変動しますが、標準的なお墓(たたみ半畳ほどの敷地)では約20万円ほどです。

これは、お墓を更地に戻すための墓石撤去や残土処分などの費用です。ご遺骨を新しい場所に納骨または海洋散骨をする場合は、別途その費用が必要です。

石材店について

お墓が公営墓地の場合は石材店選びは自由ですが、民間・寺院墓地の場合は石材店が指定されている場合が多いです。

参考:「墓じまい」と「改葬」の違いについて

墓じまいとセットでよく使われる用語に「改葬(かいそう)」があります。

改葬は、「お墓に埋葬されている【遺骨】を別の場所(お墓など)に移すること」です。簡単に言えば「お墓の引っ越し(遺骨の移動も含む)」です。また、【お墓を残して「一部の遺骨」を移す】も改葬です。

墓じまいは、単純に「お墓を更地にして管理者に返す」ことです。例えば、まだ1度も納骨していないお墓を返す場合は、「遺骨の移動が発生しない」ので、墓じまいに該当します。

実際は、どちらの言葉でも良いと思います。ただ、「今のお墓をやめる」という意味では、墓じまいの方が言葉的に分かりやすいですね。

寺院墓地をやめる場合、高額な「離檀料」を請求される?

寺院内にお墓をお持ちの方は、基本的にその寺院の檀家(寺院を資金面などで支える家)だと思います。つまり、墓じまいで寺院にお墓を返すことは「檀家をやめる(離壇する)」が基本的な考え方です。

ただ、諸事情でお墓を返しても、今後もお葬式・法要でお付き合いを続ける場合もあると思いますので、一概に「お墓を返すから檀家をやめる」ではありません。

MEMO

最近は、誰でも(檀家にならなくても)利用可能な寺院墓地もありますので、必ずしもその寺院の檀家とは言えません。

そして、寺院墓地のお墓を墓じまいする場合、寺院から「離檀料(りだんりょう)」を請求されるという問題を時々メディアで見ます。離檀料が0円の場合もあれば、数百万円と高額な離檀料を請求される場合もあるようです。

そもそも離檀料は、今までお世話になった感謝の気持ちとして渡す「御布施(お金)」なので、寺院側が金額指定すること自体がおかしいのですが、近年の「檀家離れの増加=お寺の収入減」も影響しているのかもしれません。

離檀料は平均数万円~20万円位と言われますが、納得のできる金額でしたら「先祖代々からお世話になった感謝の気持ち」として割り切ってお渡しすることもおすすめです。大切なご遺骨に関わることですので、トラブルなく済ませることが一番です。

もし、高額な離檀料を請求され、交渉にも応じない、支払うまで埋蔵証明書を発行しない等の不当な対応をされた場合は、役所や法律の専門家へ相談しましょう。

支払い義務について

寺院墓地にお墓を建てる(購入する)際に、契約書に離檀料に関する規定がなければ、支払い義務はないと考えられます。離檀料は基本的に御布施ですので、契約書での規定は少ないと思います。
また、昔から寺院墓地をご利用の場合は契約書を交わしていない可能性もあります。

墓じまい(改葬)をご希望の場合は、新しい納骨先の霊園へのご相談がおすすめです

墓じまいを(改葬)して、埋葬されていた遺骨を他の場所に埋葬・散骨をご希望の方は、新しい納骨予定先の霊園へのご相談がおすすめです。霊園管理者は、墓じまい(改葬)の手続きに関する専門家でもあるはずですので、お困りの場合は必ず事前に相談しましょう。

MEMO

墓じまい(改葬)は、現在のお墓がある市町村から「改装許可証」を発行してもらう必要があります。簡単に言えば、「お墓(遺骨)を引っ越ししても良いですよ」という許可証です。
※詳しくは、新しい納骨予定先の霊園(または市町村の役所)へご相談ください。

最後に

現状や将来的な事を考慮して、墓じまい(改葬)をお考えの方も多いと思います。ただ、ご家族・親族がいらっしゃる場合は、ご自身の意見だけで単独で手続きを進めず、まずはゆっくりと皆さんで相談されることがおすすめです。

また、新しい納骨先として永代供養の合葬墓や納骨堂をお考えの場合は、インターネットなどで調べて2~3か所は現地見学がおすすめです。その際には、必要な手続き・総額費用・年間管理費の有無・納骨期間などを確認しましょう。

今は色々なお墓・納骨堂が誕生していて、ホームページの情報だけでは理解がむずかしい部分もありますが、数か所見学をすれば、ご希望に合った場所がだんだんと分かってくると思います。

大切なご遺骨に関わることですので、焦らずに少しずつ進めていきましょう。