ご夫婦の財産は、長年夫婦が協力して築いたものです。そのため、夫婦のどちらかが亡くなった時に、「配偶者(夫婦間)の相続」に関しては特別に相続税が控除されます。
財産には、ご自宅・預貯金・車など様々ありますが、形式的に大部分が夫の名義であること多いと思います。
そして、通常は男性の方が平均寿命が短いので、「夫が亡くなり、妻が相続する」というケースが多くなります。その際に、配偶者である妻に多額の相続税がかかると、後々の生活に困ってしまいます。
そのため、夫婦間の相続は特別に相続税を減額して、配偶者に財産を多く残す制度が「配偶者控除」です。
配偶者控除(配偶者の税額軽減)
一般的に「配偶者控除」と呼ばれますが、正式には「配偶者の税額軽減」といいます。配偶者が財産を相続する場合(夫婦間の相続)は、特別に相続税が軽減される制度です。
配偶者控除を受けるための条件
- 戸籍上の配偶者である
婚姻期間は関係ありません。内縁関係は認められません。 - 遺産分割が完了していること
相続税の申告期限10か月以内に遺産分割が完了している必要があります。 - 相続税の申告書を税務署に提出
計算上、相続税が0円になっても、申告書の提出が必要です。単に申告漏れなのか、税務署が判断できないからです。
最低でも1億6千万円
配偶者控除は
配偶者が相続する財産が、「法定相続分」と「1億6,000万円」どちらか高い金額までは相続税を課税しない
という制度です。
法定相続(法定相続分)について
故人が遺言書を残していない場合、民法で故人の財産を相続できる人が定められています。その人たちを法定相続人と言います。そして、法定相続人が相続できる割合(法定相続分)も決まっています。
【夫が死亡し、妻と子が法定相続人】が最も多いケースです。この時、法定相続分は「妻と子」それぞれ1/2ずつです。財産が1億円の場合は、それぞれ5,000万円ずつです。
相続税の軽減制度は、先に「基礎控除」があり、後で「配偶者控除」
まず、相続税の軽減制度には「基礎控除」がありますので、財産が基礎控除額以内であれば、その時点で相続税は0円です。
基礎控除額:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
例えば、妻と子が相続人の場合、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円」です。財産が4,200万円を越えなければ、相続税は0円です。
もし、財産が多くて基礎控除額を超える場合でも、配偶者には特別に「配偶者の税額軽減」がありますので、資産家でなければ相続税の心配はありません。
「(プラスの財産-マイナスの財産)-基礎控除など」
被相続人(故人)が残した財産を調査して、評価(お金に換算)します。
死亡保険金や生前贈与分などを加算。
借金や買掛金などの負債額を引きます。
STEP1~3で求めた金額から基礎控除額を引いて、0以下になれば相続税は0円です。
もし、基礎控除額を超えた場合は、その金額に対して相続税がかかりますが、「配偶者控除」を適用すれば資産家でない限り相続税は0円になります。
ほとんどの配偶者は相続税が0円
再確認として、「配偶者控除=法定相続分と1億6,000万円どちらか高い金額までは相続税がかからない」という制度です。
法定相続分は、誰と誰が相続人になるか?によって異なります。
- 配偶者のみ
配偶者がすべて - 配偶者と故人の子
配偶者:1/2、子:1/2 - 配偶者と故人の両親
配偶者:2/3、両親:1/3 - 配偶者と故人の兄弟姉妹
配偶者:3/4、兄弟姉妹:1/4
配偶者控除の理解としては、ざっくりと「配偶者は相続財産が1億6,000万円以下なら相続税はかからない」で良いと思います。
夫・妻・子の3人家族で、夫が亡くなり財産が2億円ありました。相続人は妻と子で法定相続分では1億円ずつです。
ここで、配偶者である妻の「配偶者控除」を考えます。
配偶者控除は【配偶者が相続する財産が「法定相続分」と「1億6,000万円」どちらか高い金額までは、相続税を課税しない】という制度でした。
この場合、法定相続分:1億円と1億6,000万円を比べると、1億6,000万円の方が多いです。つまり、配偶者の妻は、仮に財産2億円の内の1億6,000万円まで相続しても相続税は0円です。
参考1と同じケースで、財産が4億円ありました。妻と子、それぞれの法定相続分は2億円ずつです。
法定相続分:2億円と1億6,000万円を比べると2億円の方が多いです。つまり、配偶者の妻は2億円まで相続しても相続税は0円です。
かなりの資産家でなければ、あまり相続税の心配は必要ないと思います。
相続税は一次相続(配偶者と子)よりも二次相続(子のみ)に注意が必要
- 一次相続:
ご夫婦のどちらかが亡くなる。「夫が亡くなり、妻と子が相続人になるケース」など。 - 二次相続:
その後に残された配偶者が亡くなる。「夫が亡くなった後に妻が亡くなり、子が相続人になるケース」など。
一次相続と二次相続では、「基礎控除」の額と「配偶者控除」が異なります
ご説明したように、一次相続では配偶者控除がありますので、最低でも1億6,000万円までは相続税がかかりません。
「じゃあ、一次相続の時に配偶者控除を最大限に利用して、相続税を0円にした方がお得!」と思うかもしれません。
確かに、一次相続だけを考えるとお得です。しかし、必要以上に配偶者が相続すると、二次相続(=子が相続する時)に相続税が非常に割高になる場合もあります。
二次相続も視野に入れて考える
一次相続であまり控除を利用しすぎると、二次相続で子に大きな負担がかかる可能性もあります。総合的に考えると、一次相続では「配偶者の今後の生活に必要な分を相続する」ことが理想的かもしれません。
相続税はとても複雑ですので、相続専門の税理士さんへのご相談がおすすめです。
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